タイ国経済概況(201611月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される
諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(
BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会 

1.景気動向

タイ商務省が1026日に発表した貿易統計(速報値)によると、19月の輸出額は1,6046,770万ドル、前年同期比▲0.7%となり収縮幅が減少。
工業製品の輸出は同
1.3%増、このうち車両・部品は同4.3%増と好調。
一方、農産物・加工品は、米、天然ゴム、キャッサバなどの輸出額減少により同▲
5.1%となっている。9月単月では1946,030万ドル、前年同月比3.4%増となり、201410月以来の高水準となった。
同省のピムチャノック貿易政策戦略局副局長は、今後の米国の金利引上げに伴うバーツ安や原油や農産物の価格が上昇し始めていることなどを材料に、年末から2017年にかけて輸出が回復するとの見通しを示した。
また、設備投資用と見られる機械輸入の回復に言及し、投資家のタイ経済への信頼感の高さについても指摘。
なお、各民間団体は世界経済の回復の遅れやバーツ高により、
2016年の輸出成長率は0~▲2%、4年連続のマイナス成長を見込んでいる。
サイアム商業銀行グループのエコノミック・インテリジェンス・センター(EIC)は111日、新車購入支援制度(ファーストカープログラム)の利用時に組まれた自動車ローンの多くが完済となったことから、2016年から2018年にかけて消費者の購買力が300億から330億バーツ拡大するとの調査結果を発表。多くの消費者はローン返済に代わる支出として、観光、不動産の購入、消費財、住居の改装などを挙げた。
しかし、保有車を売却して新車を購入すると回答した割合は全体の7.2%に留まり、期待されていた新車販売数の増加は限定的なものとなる可能性がある。
バンコク日本人商工会議所(JCC)、在タイ日本大使館、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所は1026日、日系企業を対象にした国王崩御の影響に関するヒアリング調査の結果を発表した。
調査は
25日に実施され、対象は商社、自動車、電機などの日系企業30社で、内2割が国王崩御後に売上が減少したと回答。一方で事業活動、在庫、経営企画、通関や行政手続きについては、ほぼ全社が「影響なし」と回答した。

2.投資動向
世界銀行は1025日、「ビジネス環境の現状」の2017年度版を発表。この中でタイは前年と変わらず46位となっている。「会社設立」や「資金調達」の項目で評価を大きく上げた一方で、「電力調達」、「建設許可」、「納税環境」などの項目で評価を下げた。
報告書は毎年発表され、対象国は
190ヶ国・地域。ASEANでは、シンガポールが2位で首位。以下、マレーシア(23位)、ブルネイ(72位)、ベトナム(82位)、インドネシア(91位)、フィリピン(99位)、カンボジア(131位)、ラオス(139位)、ミャンマー(170位)と続く。なお、日本は34位となっている。
タイ投資委員会(BOI)によると、外国企業(外国資本が10%以上の企業を集計)の19月のBOI投資優遇制度への申請は、1,6983,800万バーツ、648件となり、金額は前年同期比2.4倍、件数は同1.7倍へ増加。
政府のデジタル経済開発政策に伴いソフトウェア事業への投資申請が増えたほか、自動車や同部品産業など投資額
10億バーツ以上の大型プロジェクトの申請が多かったため。国別にみると、日本からの投資申請が金額、件数ともに最多(3174,000バーツ、185件)、自動車エンジンやスポーツ用多目的車の大型投資計画が寄与した。

3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると20169月末時点の金融機関預金残高は174,268億バーツ(前年同月比3.7%増)、貸金残高は164,577億バーツ(同4.0%増)といずれも増加。

4.金利動向
10月の回顧)  10月のバーツ金利は、長期10年物国債利回りは2%台前半で小動き、2年物国債利回りは1.5%台で推移も、月末、1.7%迄上昇。2年債は、月末の受給要因に加え、発表されたタイの輸出、製造業生産指数が予想を上回る好調さを示したことが、金利上昇要因に。
また
10年債については、米国利上げ期待で米国金利が上昇するのにつられ上昇する局面はあったものの、タイの低インフレが続く中、低位安定推移となった。
11月の展望)  周辺国での利下げが目立つ中、タイ中央銀行は政策金利据置きを継続している。国王崩御後の国内消費等への影響は一時的との判断から、タイ中央銀行の金融スタンスに変化はなく、バーツ金利は小動きか。

5.為替動向
10月の回顧)  10月、月初ドルバーツ相場は34台後半で推移も、発表された好調な米国経済指標を受けて、米国の12月利上げ思惑が高まりドル買いに。その後、タイ国内での国王関連ニュースで相場は上下した。
国内機関投資家を中心とした投機的な動きで、タイ株が大幅下落、ドルバーツ相場も
35.90迄バーツ安となったが、タイ株が買い戻されるとバーツも34.80台迄戻した。
相場が落着きを取り戻すと、再び海外ニュースで上下する展開となり、堅調な米経済指標および人民元安を受けて、ドル買い、バーツ売りで
35台を回復した。月末にかけて、国内輸出企業のドル売りでドルの上値を押さえられ、35.00を挟んでの展開となった。
11月の展望)  好調な米国経済指標が続く中、米国の12月利上げ期待が高まっており、ドル買いにつながっている。
また、中国人民元安がアジア新興国通貨のバーツ安要因となり、ドルバーツ相場はドル堅調推移を予想。


6.政治動向
プミポン国王が1013日に88歳で崩御。国民から深く敬愛されてきた国王の死を悼み、現在タイ国民および在タイ外国人は喪に服している。
もっとも国王崩御の直後も経済および金融に大きな混乱はなく、工場の操業も自発的に休止した一部の企業を除き、多くは平常運行してきた。
民政移管のロードマップについても、ウィサヌ副首相は変更無い旨を
1025日に述べており、予定通り2017年中に総選挙を実施する方針を示した。しかしながら民政移管の遅れを予測する意見も多く、新国王の戴冠式の時期も未定であることから、先行きは不透明となっている。
今後の経済情勢については消費の停滞が懸念されているが、経済成長率予測の下方修正などは今のところ行われていない。

タイ国家賃金委員会は1019日、69都県の最低賃金を201711日より、1日あたり510バーツ引上げることを決定した。
現在、最低賃金は全国一律で
1日あたり300バーツとなっているが、2017年以降は各県別の最低賃金が適用される。
なお、バンコクは
310バーツ、チョンブリ県およびラヨン県は308バーツ。これに対しタイ労働連帯委員会は1026日、本決定の見直しと全国一律での改定を求める首相宛の陳述書を提出した。
観光・スポーツ省は、ロイクラトンや年末のカウントダウン、スポーツイベントなど大規模なイベントは国王への敬意を払うことを前提に開催する方針を示した。
もっとも、花火の打上げや爆竹の使用は認められない模様。また、政府は国王の崩御から
1ヶ月経つ1114日より娯楽活動や通常のテレビ放送を再開することを承認している。
人材紹介サイトを展開するジョブズDBタイランドが、国内新卒者、就労者計446人を対象に今年201656月に実施した「就職したい会社」アンケートの調査結果を発表した。
トップはタイ石油公社(
PTT)、次いでサイアムセメント(SCG)、トヨタ、グーグル、ホンダと、トップ5のうち日系企業が2社ランクインした。
選んだ理由としては「待遇面」が
16%で最多、以下「会社の安定性」が15.6%、「会社の知名度」が13%と続く。待遇面では家族の医療費補助、通勤手当や住宅手当の支給有無や多寡なども重要な判断材料となっている。

当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
詳細記事/統計データ

出典:日タイビジネスフォーラム金融委員会    http://www.jtbf.info/review1611_j.html