日タイビジネスフォーラムより転載

タイ国経済概況(2015年2月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、

および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会

1.景気動向

財政局は2014年経済成長率の落着見込を0.7%増、2015年経済成長率の予測を3.9%増とした。

現在、景気は緩やかに回復しており、その主要な推進力は物品輸出と観光セクター。

物品輸出は景気が順調に拡大している米国向け、特に集積回路と電化製品が好調。一方で、中国需要は減少し、石油、天然ゴム、化学薬品など

多くの製品で、原油価格に沿って価格が下落。

なお、石油価格の下落による民間支出への波及効果は、高水準な家計債務、農産物価格の下落、厳格な金融機関の家計向けの与信基準などの影響に

より及んでいない。

このため耐久財支出、特に自動車の購入の回復はまだ先となる見込み。

観光セクターは、円安とロシア・ルーブル安による日露観光客の減少を、中国とマレーシアからの観光客の増加が穴埋めしている。

サービス支出も、外国人観光客の支出に支えられ、順調に拡大。

経済安定性に関しては、失業率は低位にとどまり、世界市場の石油価格の大幅な低下によってインフレ率は低下し、経常収支は黒字となっている。


タイ暫定政府は2016年度(15年10月〜16年9月)予算枠を承認。

歳出は前年度比5.6%増の2兆7200億バーツで、歳入は同0.2%増の2兆3300億バー

ツに設定。予算上の赤字は3900億バーツとなる。

歳出の内訳は、一般経常予算が2兆1003億6300万バーツ(前年度比3.6%増)、投資予算5440億バーツ(同21%増)。


2.投資動向

2014年の投資申請額は去年比2.2倍の2兆1927億バーツ(申請件数は去年比73%増の3469件)の過去最高額に達したとBOIは発表。

15年1月からの新投資奨励戦略の導入を前に駆込み申請が殺到し、12月単月のみで申請は1兆4282億バーツ(2092件)となった。

このうち外国企業からの2014年投資申請額は1兆230億バーツ。

日系企業による投資申請額は、2933億バーツで前年度から微増であるものの、外国投資額における日本企業の割合は、54%から29%に急落。

なお、BOI統計における外国(日本)企業とは、外国(日本)資本が10%を占める会社と定義されている。


プラユット首相は2月8〜10日に日本を訪問し、安倍首相との首脳会談に臨む。2月9日には鉄道新線プロジェクトの合意覚書署名式に立ち会う予定。

共同開発する新線は、カンチャナブリ県のミャンマー国境とサケーオ県のカンボジア国境を結ぶルートが選ばれる見込み。

一方中国は、これに先んじて12月に、タイ国内に総延長約870kmの路線を敷設する鉄道建設計画についてタイと覚書を交わしている。

中国は、アジアインフラ投資銀行の設立によるインフラ整備の主導権の確保、二大国有鉄道車両メーカーの合併による競争力の強化など、

アジアの鉄道事業に力を入れている。


2014年のタイ国内自動車販売台数は前年比33.7%減の82万台。

ファーストカー減税政策の反動、政情混乱や農産物価格の低下などが影響。

輸入車販売台数に限れば前年比3.4%増の29万196台と5年連続で前年実績を上回っている。

中でも株高を背景に金融資産を持つ富裕層の消費が旺盛で、1000万円以上の超高級車の販売台数は31.7%増と大幅に伸びている。

なお、生産台数は前年比23.5%減の188万台と落ち込んでいる。


3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2014年12月末時点の金融機関預金残高は16兆4344億バーツ(前年同月比4.2%増)、貸金残高は15兆3434億バーツ

(同4.5%増)といずれも増加。


4.金利動向

(1月の回顧) 1月を通してバーツ金利に大きな変動はなく、政策金利の影響を受けやすいタイの2年物国債金利は2.1%台で小動き、長期10年債は

2.7‐2.8%の狭いレンジでの動きに終始した。

月初発表されたタイの12月消費者物価指数は前年比0.6%増加と、原油価格下落の影響から物価が大幅に低下。物価低下の中、

足元冴えない国内経済が続いていることから、一部に利下げの声もあったが、28日タイ中央銀行は政策金利を予想通り2.00%に据え置いた。

前回同様、5対2の票差で据え置きを決定、利下げ派2名は前回から増えることはなかった。

現在の金利水準は十分に緩和的とする従来からの主張に変化はなく、インフレの低下も、エネルギー、生鮮食品を除いたコア指数が下げていないことから、

利下げをサポートする要因とはならなかった。市場では据え置き予想が利下げ予想を上回っていたことからバーツ金利への影響は限定された。


(2月の展望) タイ国内経済の回復は鈍く原油安に伴いインフレも抑制されている。タイ中央銀行は少なくとも現在の緩和的な金融スタンスを継続するとして

おり、金利は上昇しにくい。また、米国は利上げ方向も、日本、欧州を中心に世界的な金融緩和で、世界的な金余りが続いており、バーツ金利上昇抑制要

因となっている。


5.為替動向

(1月の回顧) 年初5日、ドルバーツ相場は、年末年始の海外市場でのドル買いの流れから、一時33.06迄進行した。

その後、WTI原油先物相場が節目の1バレル=50ドルを割れたこともあり、リスク回避の動きで世界的な株安が進んだ。

但し、ドルバーツ相場ではバーツ安とならず、ドル円相場でのドル売りにつられ、ドル安、バーツ高に。

14日、世界銀行が前日に2015、2016年の世界経済成長率見通しを引き下げたことで、アジア時間に銅価格が急落した。

また、スイス中央銀行がこれまで設定していたスイスフランのユーロに対する上限撤廃を発表したことで、スイスフランが対ユーロ、対ドルで急騰した。

市場が混乱したことから、安全資産としての米国債が買われ、米国金利が低下したことでドル売り、バーツ買いに。

欧州中央銀行が量的緩和実施で余剰資金がタイ流入したこともあり、一時32.50台迄バーツ買いとなった。

一方、円バーツ相場は0.27台を中心に方向感なく推移した。


(2月の展望) タイ経済の回復は鈍いものの、タイ中央銀行が金利据え置きを継続しており、ドルバーツ相場は、金融緩和を実施している他国の通貨と

比較すると、ドルに対して売られにくい。

米国の利上げ思惑でドル買いになりやすいものの、米国以外が金融緩和の中、海外からの資金が入る局面もあり、バーツ安を抑制しそうだ。

但し、ドルバーツ相場での本格バーツ高は、タイの景気回復次第となっている。


6.政治動向

立法議会は1月23日、職務怠慢を理由にインラック前首相の弾劾を決めた。これによりインラック前首相は5年間の政界追放処分を受ける。

タイの刑法では、公職者が公務としてすべき業務をしなかった場合、罰せられることが規定されている。

立法議会へ弾劾請求を行った国家汚職防止委員会は、インラック政権の米担保融資制度により6000億バーツ近い損失を計上したこと、

タイ米の品質を低下させ国益を損なったなどと主張してきた。

さらに、検察当局はインラック氏を刑事告発する方針を発表した。

有罪の場合、最高で禁錮10年となる。

プラユット政権は、デモ等による治安の悪化を警戒しており、インラック前首相の弾劾に関して批判的な発言をした者の召喚を開始した。

プラユット首相は、何度も召喚を受けた人物については、出国禁止、資産調査、商取引禁止などの措置を発動すると述べている。


ドイツの人権団体であるFES財団と、タイ報道人協会が1月末予定していた報道の自由に関する記者会見が

NCPO(国家平和秩序維持団)の中止要請により取りやめとなった。

NCPOは報道の自由に関する発表が、現在の状況下では国が損害を受ける可能性があると主張してきた。


タイの汚職・腐敗状況は軍政の出現により改善していると、タイ商業会議所大学景気予測センターが報告。昨年の2014年12月の調査によれば、

企業による官僚への賄賂の支払いはプロジェクト価値の5〜15%で、金額にして503〜1500億円。

2010〜2013年の調査では、プロジェクト価値の25〜30%であった。

専門家は、腐敗の背景を以下の要因と指摘している。法執行の不徹底、汚職習慣を監督し検査するメカニズムの欠如、公務員の低い報酬など。

当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

   (出典:http://www.jtbf.info/poli_economy/review1502_j.html)