タイ国経済概況(2015年3月)

コメント:このレポートによると、BOI申請は昨年同比でわずか5%とのこと。また、固定資産税の導入は成立される見通しです。このレポートは、大変有意義です。

 

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、

および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会

1.景気動向

タイ経済は先月同様緩やかな回復基調。工業生産は雇用と工業部門の電力消費量が減少したことを反映し前月比で縮小したものの

多くの工業の生産は回復している。

集積回路(IC)の生産は世界市場の半導体サイクルの好転を受け、前年同月比で増加。自動車生産もエコカーの海外需要増から増加。

ビール、衣料、石油製品も生産が増加している。一方で、HDDはSSDの台頭により需要が減少し生産も減少。

電化製品生産は海外需要、特にEUと日本の需要低迷から減少。またセメント、建材も不動産市場の減速から生産が収縮している。

観光セクターは引続きタイ経済の牽引力となっており、1月の外国人観光客数は260万人で前年同月比15.9%増、プラス成長は4ヶ月連続となっている。


タイ工業連盟によれば、1月のタイ四輪完成車の輸出台数は前年同月比14.1%増の9万2440台で、3ヶ月連続のプラス成長。

金額ベースでは同10%増の411億5140万バーツであった。

一方で、1月の自動車生産台数は16万6260台となり前年同月比で2.22%増にとどまったものの、19ヶ月ぶりにプラスに転じた。

なお、同連盟による今年の1年の自動車輸出の見込みは120万台。そして、自動車部品輸出額の予測は前年比6〜8%増の200億米ドルとなっている。

主な輸出先は、インドネシア、日本、米国、フィリピン、マレーシアなど。タイから東南アジアの周辺国に製造拠点を移し、移転後も引き続きタイから

部品を調達する自動車メーカーが多いために部品輸出が伸びるとみられている。


2.投資動向

BOIは、外国企業による1月の投資促進権の申請金額が計5億7900万バーツにとどまったと発表。

前年同月と比べると約20分の1という低水準になっている。

原因は、今年1月からの新投資奨励戦略導入にともなう駆込み申請の反動および、企業の様子見とみられている。

また、IHQ(国際地域統括本部)やITC(国際貿易センター)の制度詳細がまだかたまっておらず、今後タイがASEAN地域のハブを目指すために

どのような施策を打ち出すのか注目が集まっている。


BOIのヒランヤ長官代理は都内で行われた投資セミナーにて、輸入税減免の対象となる中古機械の使用期間の見直しをしており、

結論を遅くとも4月までには出す方針であることを明らかにした。

タイではこれまで、製造日から輸入日までが10年以内であれば、第三者の検査機関の証明を条件に輸入税(関税)の減免が受けられた上、

10年超であっても、輸入税と付加価値税(VAT)を納付すれば奨励事業に使うことができた。

しかし、今年1月1日から施行された新投資奨励制度では奨励事業に使える輸入中古機械の対象を「製造日から輸入日まで5年以内」に厳しくした。

これにより、日本などタイ国外にある工場で使っていた生産設備をタイに移して使うことが従来より困難になるため、日系企業から見直しを求める声が

出ていた。


ダウェーSEZの第1期開発計画が、向こう2年内に完工する見通しが明らかになった。

バンコクポストの報道によれば、第1期開発は27平方キロメートルが対象で建設費は200億バーツ。

ダウェーSEZの開発は、2月9日の首脳会談にて安倍首相が日本も参画する方針を伝えており、日本は出資の他にもJICAの専門家を派遣し、

幹線道路建設に関する調査を実施する予定。


3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2015年1月末時点の金融機関預金残高は16兆5391億バーツ(前年同月比4.3%増)、貸金残高は15兆3405億バーツ

(同4.3%増)といずれも増加。


4.金利動向

(2月の回顧) 月初発表となった、1月消費者物価指数は、原油安の影響で前年比0.4%のマイナスとなった。ただし、コア指数が下げていないこともあり、

特段利下げ期待は高まらず。

また、16日に発表された、タイの第4四半期国内総生産が予想を下回ったものの、直後にタイ中央銀行サイドから、現在の金融政策は十分緩和的で、

デフレのリスクはないとのコメントが出たことで、金利低下には結びつかなかった。

バーツ金利は、米国金利につられる展開となっており、米国金利の上昇を眺めながら、タイの10年国債利回りは月初の2.75%近辺から2.99%近辺迄

上昇した。

24日、イエレン米FRB議長の議会証言が、早期利上げを期待していた市場参加者には期待外れの内容であったため、米国金利は低下。

つられてバーツ10年国債利回りも2.88%近辺に低下した。一方、政策金利が反映しやすい、タイの2年物国債利回りは、2.1%台を中心に膠着。


(3月の展望) 周辺アジア諸国では、利下げを実施する国が目立つも、タイ中央銀行の政策金利据え置きを継続していることから、金利は当面安定推移。

国内経済は消費、投資に加え、輸出も低迷しており、国内要因で金利は上昇しにくくなっており、金利膠着を予想。


5.為替動向

(2月の回顧) 月初、ドルバーツ相場は、32.70台で推移も、その後バーツ買いが優勢に。32.60を抜けると、相場が加速、32.49迄進行した。

外国人投資家資金が債券市場に流入し、バーツ高要因となった。

32.50近辺は底堅く、その後、ドル買戻しで32.50、60台を中心とした相場展開となった。

海外市場では、ギリシャ債務問題が焦点となり、リスク回避の展開になったが、ドルバーツ相場への影響は限定された。

16日、市場予想を下回ったタイの第4四半期国内総生産(GDP)に反応せず

また17日インドネシアが利下げを発表、域内でタイの金利据え置きは目立っていることがバーツ買いにつながったものの32.50台を中心としたレンジ

相場に終始した。

その後、24日イエレン米国連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言で、米国の早期利上げ観測が後退、米国金利が低下した。

ドルバーツ相場は、米国金利低下を受けて、26日、32.50を割れると動きが加速し、32.315迄進行した。

一方、円バーツ相場は、ドルバーツではバーツ買い、ドル円ではドル買い、円売りとなったことで、月末0.2700近辺まで円安が進行した。


(3月の展望) タイ中央銀行が金利据え置きを継続する中、アジア周辺諸国は利下げを実施。

米国は利上げ方向も、日本、欧州は金融緩和を継続しており、タイの据え置きが目立っている。

国内景気は引き続き低迷しているが、金利に着目した、バーツ買いが入りやすい。

ドルバーツ相場は米利上げ思惑によりドル買いとなる局面が予想されるが、円バーツ相場はバーツ高継続を予想。


6.政治動向

2月19日の官民合同会議で、産業界が提案していた中小企業(SME)の法人税率引き下げが承認され、現行の一律20%から、収益の規模に合わせて

5〜15%を課す累進税率が設定される見込み。

通年の利益が500万バーツ以下の事業者に対しては法人税率を5%、1,000万バーツ以下は10%、2,000万バーツ以下は15%とする案が提案されている。

今後は、財務省が中心となって商務省、工業省など、関連省庁と約1カ月かけて詳細を取りまとめる予定。

なお、それと同時に税収確保のためにSMEの事業登記も推進。

現在国内には約280万のSMEがあるとみられるが、うち企業登記をしているのは、60万〜70万社にとどまっている。


ランサーン財務省次官は固定資産税(土地・建物税)について、財務省が法定税率を農地で0.25%、宅地で0.5%、商業用地で2%へと、

当初案から半減させたことを明らかにした。

また実際に課す税率は、法定上限を下回るものになることを強調している。

また、課税は2年間猶予し、その後の2年間は税率を前記の税率からさらに軽減する方針を打ち出している。

これらの措置は固定資産税に対する反発が強まっていることを受けたもの。

固定資産税はタクシン派、反タクシン派の両政権でたびたび浮上してきたが、国会議員、幹部官僚の多くが富裕層であることから実現しなかった。

しかしプラユット首相は暫定国会(クーデターで廃止された上・下院の役割を担う国家立法会議)の過半数を掌握しているため、固定資産税法案は

暫定国会にて承認される見込み。

当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

 

   (出典:日タイビジネスフォーラム http://www.jtbf.info/poli_economy/review1503_j.html