タイ国経済概況(2015年6月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、

および政治面での主要な動きを、月次まとめて お送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会


1.景気動向

NESDB(タイ国家経済社会開発委員会)は第1四半期の実質GDP成長率を前年同期比3.0%増と発表。多くの研究機関のマイナス成長予想と反して、

季節調整済前四半期比+0.3%のプラス成長となった。

価格下落による農業分野の落込みを、建設(+25.4%)、ホテル・レストラン(+13.5%)を中心とする非農業分野の拡大が補った格好。

4四半期連続のプラス成長と、経済成長率は回復基調にある一方、輸出は依然低迷している。

4月の輸出額は前年同月比▲1.7%と年初来4ヶ月連続のマイナス成長を記録し、年初来累計輸出額は前年同期比▲4.0%。商務省は今年の輸出成長率の見通しを

前年比+4%から+1.2%に下方修正している。

各機関とも、同輸出低迷を受けて各種予想値を見直しており、NESDBは対米輸出額伸び率と共に経済成長見込み率を前回予想の+3.5%〜+4.5%から+3.0%〜

+4.0%に下方修正した。

ただし、茲許のバーツ安及び原油価格上昇を背景に、今後の輸出額は回復が見込まれており、タイ商業会議所国際貿易研究所は第2四半期の輸出はプラス

成長に戻すとの見方を示している。

タイ工業連盟自動車部会は、4月の自動車生産台数を12万3,968台(前年同月比▲2.2%)と発表。全体の60%強を占める輸出向けは前年同月比+6.5%と増加した

ものの、国内販売向けの▲29.2%を支えきれなかった。

同部会は、国内販売低迷の要因として、景気低迷と共に家計債務の増加に伴う金融機関のローン引締めを挙げており、リース会社による融資拒否は通常の

1割程度から3〜4割にまで拡大しているとのこと。

一方、輸出は欧米向けエコカー輸出の増加を中心に上向き基調であり、見通しは明るい。

今年の自動車生産目標台数に関して、同部会及びタイ自動車研究所はそれぞれ、国内向けを約85万台と当初目標から10万台引下げ、輸出向けを約120万台と

据置きにし、合計200万台と引下げた。

トヨタ自動車による1トンピックアップトラック「ハイラックス」の全面刷新等、今後の生産回復材料も出てきてはいるものの、国内市場は引続き苦戦を強いられる

展開となるとみられる。


2.投資動向

5月27日タイの鉄道開発に係る日タイ協力覚書に署名がなされた。

同覚書には「バンコク〜チェンマイを結ぶ全長635kmの高速鉄道新線」「カンチャナブリ(ミャンマー国境)〜バンコク〜チャチュンサオ〜アランヤプラテート

(カンボジア国境)を結ぶ全長574kmの複線鉄道新線」を共同開発・調査を行う旨に加え、「メーソート(ミャンマー国境)〜ピッサヌローク〜コンケン〜ムクダハン

(ラオス国境)を結ぶ複線鉄道新線」の準備調査を実施する旨も盛り込まれている。

特にバンコク〜チェンマイ間で計画されている高速鉄道は日本の新幹線方式の導入を前提にしており、日本の成長戦略の柱と位置付けられているインフラ輸出に

期待感が高まっている。

しかし、4,000億バーツ超を見込む総事業費の調達や、LCCとの競合する中での採算性確保など課題は多く、実現への道のりは険しいとみられる。

BOIは1〜4月の投資計画認可件数を計957件、総額を計3,254億9千バーツと発表。前年同期の433億7千バーツから大幅に増加した。

一方、同期間の投資申請件数は計237件(前年同期比▲34.2%)、申請額は計376億2千万バーツ(同比▲85.5%)と大幅減少している。

これは昨年末の旧制度受付終了に伴う大量の駆け込み申請の影響が大きい。

また、外国資本10%超の企業による、同期間における投資促進権申請件数は計112件(同比▲57.5%)、FDIは計73億7,500万バーツ(同比▲96.6%)と発表されており、

いずれも大幅な落込みを見せている。BOIは投資申請の減少について、昨年に投資額の大きいエコカーなどの申請を受け付けた反動が主因とみている。


3.金融動向

タイ中央銀行の発表によると2015年4月末時点の金融機関預金残高は16兆8122億バーツ(前年同月比5.8%増)、貸金残高は15兆5733億バーツ(同5.4%増)と

いずれも増加。


4.金利動向

(5月の回顧) バーツ金利は、5月短期金利は緩やかに低下も、長期金利が急速に上昇した。

政策金利が反映しやすい短期2年物国債利回りは、4月の政策金利引下げの影響が継続し、1.6%台から1.5%近辺に低下した。

タイ国内景気の低迷が続いており、「タイ中央銀行は当面現在の金融緩和スタンスを維持する」との思惑が、金利低下につながった。

一方、長期10年債は2.6%台から一時3%近辺に上昇した。

ドイツ国債を中心に世界的な債券売りが拡大する中、タイの長期債にも売りが入り、金利上昇となった。

その後、相場は落ち着きを取り戻し、2.8%台まで緩やかに低下した。

(6月の展望) タイ経済は、引続き消費、投資が低迷、輸出も1-4月で前年比マイナスとなっており、回復の兆しは見えていない。

こうした中、インフレも低位推移しており、タイ中銀は少なくとも現在の金利緩和スタンスを継続することから、短期金利は上昇しにくい。

一方、長期金利は米国の年内利上げ思惑の中、米国金利につられて上下することが予想される。


5.為替動向

(5月の回顧) 4月のタイ中央銀行による利下げ及び、バーツ高抑制のための資本流出規制緩和策を受けて、5月に入ってもバーツ売りの流れが継続した。

タイに休日明けの6日、ドルバーツ相場は33.30台で推移も、米国金利上昇を受けたドル買いが広がる中、8日には33.58迄進行。

その後、中国は利下げを発表し、アジア新興国通貨全体が売られたこともあり、33.88迄バーツ売りとなった。

14日、ドルバーツ相場は前日の海外市場で、米国小売売上高が低迷、ドル売りとなった流れを受けて、33.30台に進行したものの、その後、米国のイエレン連邦

準備制度理事会(FRB)議長が、年内の利上げ開始について前向きな発言をしたことで、米国金利は上昇、ドル買いとなり、29日には33.77迄ドルが買われた。

一方、円バーツ相場は、ドル円相場で急速にドル高円安となったことを受けて、0.28台から0.27台前半迄円安が進行した。

(6月の展望) タイ経済の低迷が続く中、国内からバーツ買いとなり材料は出にくく、ドルバーツ相場は海外からのニュースに振らされる展開が継続。

米国の年内利上げの可能性が高まる中、ドル堅調地合継続を予想。

円バーツ相場は、ドル円相場次第ながら、急速なドル高、円安が一服するようであれば、円バーツでの円売りも緩やかになることが想定される。


6.政治動向

タイ軍政は、民政移管実現のための総選挙を行うに際し制定される、新憲法草案の内容の是非を問う国民投票を実施する方針を固めた。

今後のスケジュールは、まず内閣・国家平和協議会による立法議会への動議提出、議会の審議を経て、憲法起草委員会がNRC(国家改革評議会)に改正案を

送付する。

その後、8月6日NRCにて賛成多数の承認を取得、9月4日までに国王に奏上、9月中に公布、国民投票実施は来年1月頃となる見込み。

同投票で草案が可決された場合、公職選挙法など憲法関連法を約4ヶ月かけて作成・制定するため、総選挙の実施時期が当初想定から半年ほど遅れた

2016年8月に行われる見通し。

ただし、NRC又は国民投票により草案が否決された場合、起草作業が白紙から再スタートとなり、総選挙はさらに1年以上遅れる。

ウィサヌ副首相は「総選挙は来年8月より遅れることはない」との見解を示している一方、新憲法草案への批判の声も多くあり、草案否決による総選挙先延ばしの

可能性は否定できない状況。

ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャの密航問題に係る国際会議がバンコクで開催された。

参加各国は、ロヒンギャの恒久的な受入れに消極的であり、会場での救助活動の強化及び暫定的な上陸先の模索についての合意にとどまった。

タイではすでに10万人以上の難民を国内に収容していることから、新たな負担増を拒否しており、プラユット首相は彼らを難民としては認定せず、あくまで

違法入国者として扱うと言及した。

一方、人道的見地に基づく援助姿勢は見せており、海軍に軍艦2隻のアンダマン海洋上への停泊を明示、ここを基地としてパトロール、食料・医薬などの供給

支援を行っている。

緊急救助が必要な場合は軍艦にいったん収容し、マレーシア・インドネシアに設置される臨時シェルターに送る予定。

当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

(http://www.jtbf.info/)