タイ国経済概況(2016年7月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会 

1.景気動向

1.   623日の英国国民投票でEU離脱派が勝利したことを受け、本件のタイ経済への影響は限定的である旨のコメントがタイ財務省および中央銀行から出された。

英国への輸出割合は
1.8%程度であり、タイと英国の経済的結びつきが小さいため。
もっとも他のEU加盟国が離脱を表明することになれば、貿易・投資に対する今後の世界経済の回復にも影響が及ぶとして警戒が必要となる。

タイ国内の自動車メーカーからは、今後の輸出に影響が出るとする発言もあり、先行きを見守っている状況。

2.  タイ工業連盟(FTI)自動車部会が621日に発表した5月の国内自動車生産台数は前年同月比+24.7%の168,394台となり、3ヶ月連続のプラスとなった。
生産台数の車種別の内訳は、乗用車が同+5.8%の68,984台、ピックアップトラックやトラックが同+42.4%の99,402台。5月の輸出台数は、同+11.9%の99,547台となり、4ヶ月ぶりに前年同月を上回った。

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5月の生産台数の累計は、前年同期比+3.8%の813,505台、同期間の輸出台数は同▲2.3%の487,798台となっている。

3.  FTI621日に発表した5月の工業景気信頼感指数(100以上が好感)は86.4となり前月の85.0からわずかに上昇も、景況感の停滞が続いている。

本指数の若干の改善は、干ばつ被害の緩和、新学期開始による教育関連製品の需要増、政府の農産物・食品産業への振興策への期待などによるもの。

本指数は受注、価格、収益などの項目に対し、「良い、良くなった」と回答した企業の割合から「悪い、悪くなった」と回答した企業の割合を差引き100を足した値であり、FTI加入企業1,180社が対象。

2.投資動向

1.  タイ証券取引所(SET)が発表した上場企業の2015年末の対外直接投資残高は520億バーツとなり、前年末の1,160億バーツから減少した。

280億バーツの投資が取りやめられた事などが原因。
上場企業計517社のうち37%に当たる192社が対外直接投資を行い、2014年の173社から増加。

投資先としてはASEAN向けが全体の8割を占め、この中でCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)への投資は6割に達しており、国別ではベトナムへの投資が最多となっている。


2.    BOIの認可を受けた投資奨励事業における法人税の算出方法につき、日系企業のタイ子会社と国税局が係争中であったが、516日付でタイ最高裁は国税局の主張を認める判決を出した。

当社はBOIの指導に沿って税務申告をしていたものの、損益算定方法に関しBOIと国税局の解釈が割れていたことが背景。
タイ政府は本判決により企業、特に外資企業のタイ投資戦略に影響が出ることを危惧。

また、複数のBOI投資奨励事業を抱える企業が課税所得の確定作業に手間取る懸念を考慮し、税務申告の期限延期(詳細は未定)が閣議に提出される見込み。

3.  BOIによると、外国企業(外国資本が10%以上の企業を計上)の14月のBOI投資優遇制度への申請は、5789,600万バーツ、258件となり、金額は前年同期比9.5倍、件数は同2.6倍へ増加。

政府のデジタル経済開発政策にともないソフトウエア事業への投資申請が増えたほか、自動車や同部品産業など投資額
10億バーツ以上の大型プロジェクトの申請が多かったため。

国別に見ると、自動車関連産業への2件の大型投資申請があった日本からの投資申請が金額、件数ともに最多。金額は日本が全体の31%、申請件数は30%を占めている。

一方、タイ企業を含めた14月の投資申請額は2,0051,800万バーツ、件数は398件であり、地元紙の報道によればBOIヒランヤ長官は16月の投資申請額は3,000億バーツに達したことを明らかにしている。

3.金融動向

1.  タイ中央銀行の発表によると20165月末時点の金融機関預金残高は175,274億バーツ(前年同月比+4.4%)、貸金残高は162,937億バーツ(同+4.3%)といずれも増加。

4.金利動向

1.  6月の回顧) 6月のバーツ金利は、国外要因に振らされる展開となり、2年物国債利回りは1.67%近辺から1.53%に、長期10年物国債利回りは2.3%台から1.9%台に低下した。

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日に発表された米国雇用統計が市場予想を大幅に下回ったことで、米国の利上げ思惑が急速に後退した。

米国金利が低下する中、バーツ金利もつられて低下。
その後、英国のEU離脱をめぐる国民投票に市場の関心は移ったが、離脱への懸念から、リスク回避の動きが拡大し、安全資産として米国債買いに。

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日の英国国民投票でEU離脱派が勝利したことを受けて、金融市場は混乱し、米国債買いで米国金利が低下。

米国の金利低下に伴い、バーツ長期金利はつられて低下した。

2. 7月の展望) タイ経済の回復が鈍い中、英国のEU離脱による世界経済への懸念が加わったことで、タイ中央銀行は政策金利を当面据え置くことが予想される。
米国の早期利上げ思惑が後退し、世界的な金融緩和状態も加わり、バーツ金利は当面低位で推移。

5.為替動向

1.        6月の回顧) ドルバーツ相場は月初35.70台で推移。同月3日に発表された米国雇用統計が大幅に予想を下回ったことを受けて、米国の早期利上げ観測が後退し、35.27迄進行した。

その後は、英国の欧州連合(EU)離脱を問う、国民投票が市場の焦点となる。残留支持派の国会議員が殺害されたこともあり、英国の各種世論調査では残留支持派が盛り返し、市場には安心感が広がっていたものの、623日の英国国民選挙ではEU離脱派が勝利したことを受けて、金融市場は大混乱となった。
離脱派の勝利が確実となると、リスク回避の動きが拡大し、リスク資産扱いの新興国通貨バーツは、ドルに対して売られ、35.10台から一時35.53まで進行した。
その後市場は落着きを取り戻しドルバーツ相場は35.00台前半で膠着した。

2. 7月の展望) 英国のEU離脱決定を受けて、世界経済への懸念が強まる中、米国の利上げが遠のくとの観測が、ドルバーツ相場のドルの上値を抑制。

一方、世界経済への不安は、リスク資産扱いのバーツ安要因であり、ドルバーツ相場の方向感は出にくい。


6.政治動向

1. タイ訪問中のアウン・サン・スーチー、ミャンマー国家顧問兼外相は624日、プラユット首相と会談を行い、タイで働くミャンマー人出稼ぎ労働者の待遇改善や経済協力など幅広い分野で両国間の関係を強化することで一致した。

また、タイ・ミャンマー国境の難民キャンプで暮らす10万人以上のミャンマー難民について、将来的に全員の帰国を受け入れる考えを示した。

2. 国民投票を前に新憲法案反対派への締め付けが強化、学生活動家や反体制派らが拘束を受けており、国連や人権団体などから批判の声が上がっている。
このような中、憲法裁判所は629日、新憲法案の反対運動を制限する国民投票法61条が基本的人権を保障する暫定憲法4条に違反しない旨の判断を下した。
これにより国民投票法の改正は回避され、新憲法案の是非を問う国民投票は予定通り87日に実施されることになった。
現在、国民投票の可否は不透明な状況。

新憲法案が否決された場合も、プラユット首相は首相続投の意を示しており、新たに憲法案を起草し直すとしている。

3. 国税局はVAT(付加価値税)の税率7%の適用期間について、期限となっている今年の9月末より、さらに1年の延長を内閣に提案する方針であることをプラソン国税局長が明らかにした。

VAT
の税率は法律で10%と定められているが、景気動向をにらみながら暫定税率7%が適用され、10%への移行は長らく先送りされてきている。

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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

出典:http://www.jtbf.info/review1607_j.html