タイ国経済概況(2016年8月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会  

1.景気動向

  1. タイ中央銀行は7月29日、2016年6月の主要経済指標(速報値)を発表、製造業の生産および民間投資の低迷を示した。

    同月の輸出額(国際収支ベース)は、前年同月比+1.9%の約180億米ドルとなったものの、EU離脱問題で金の国際価格が上昇したことが要因であり、金を除いた金額はマイナスとなっている。

    財務省もタイの主要貿易相手国の経済成長の鈍化により、今年の輸出成長率予測を前回4月の▲0.7%から▲1.9%に引下げたと発表。

    もっとも、公共投資が経済を下支えすることなどを踏まえ2016年経済成長率の予測については、中央銀行(前回3月予測:3.1%)も同省(前回4月予測:3.3%)も据え置いた。

  2. タイ工業連盟(FTI)自動車部会が7月27日に発表した6月の国内自動車生産台数は、前年同月比+18.57%の17万9,875台となり、4ヶ月連続のプラスとなった。

    国内向けおよび輸出向けの双方で生産が上向いている。

    また、上半期の生産台数の累計は、前年同期比+6.2%の99万3,380台、同期間の国内販売台数は同▲0.1%の36万8,630台、輸出台数は同+3.3%の59万4,823台となっている。

    FTIのスラポン副会長は、国内向け生産が4割を占める直近3ヶ月の傾向から、国内購買力の回復を指摘。

    輸出向けは120~125万台、国内向けは75~78万台に到達する見込みを示した。

    タイ国トヨタの棚田社長も、7月26日の会見にてタイ国内市場につき全体的な売上げ減少は底打ち感がある旨を述べている。

  3. タイ商務省が8月1日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は106.68(2011年=100)で前年同月比+0.1%と4ヶ月連続の上昇、1~7月の平均指数は前年同期比▲0.07%となった。

    下半期には政府の大型インフラ投資により建材価格が上昇し、CPI全体を押し上げることが予想されている。

    ソムキット同事務局長は、物価の上昇傾向が下半期も続くと予測。CPIの通年予測は0~1.0%に据え置いた

2.投資動向

  1. タイ投資委員会(BOI)の集計によると、上半期における外国企業のBOIへの投資優遇制度に対する申請金額は、1,237億2,700万バーツ(前年同期比4.9倍)、申請件数は448件(同比2.2倍)となった。

    政府のデジタル経済開発政策にともなうソフトウエア事業および、自動車や同部品産業など投資額10億バーツ以上の大型プロジェクトの申請が増加したため。

    なお、申請額のうち72億バーツ、39件は、国境県を中心に設置される経済特区(SEZ)への投資が占めた。

  2. パープルラインが8月6日、正式開業した。
    クロンバンパイ駅(ノンタブリ県)からタオブン駅(バンスー駅近く)まで、駅数16、総延長23kmとなっている。

    総合車両製作所(JR東日本グループ)が車両、東芝が電気機器どを製造し、丸紅がプロジェクト管理を担当。

    JR東が保守を10年請け負っており、建設から運用まで日系企業が手掛けた。

    なお、2004年に開通したMRTブルーライン(地下鉄)と同様に円借款790億円が供与されている。

  3. ミネベアは日タイで100億円を投資し、航空機の部品を増産する。

    うちタイには60億円を投じ、ロッブリー県の工場にて離着時の開閉フラップに使うベアリングなどの量産体制を構築。

    もとは米英の拠点のみで量産していたがアジアでの需要増に対応する。

    本件は、格安航空会社(LCC)の台頭により急拡大する小型機を中心とした航空機の需要増をうけたものとみられる。

3.金融動向

  1. タイ中央銀行の発表によると2016年6月末時点の金融機関預金残高は17兆5,763億バーツ(前年同月比+4.8%)、貸金残高は16兆3,541億バーツ(同+4.5%)といずれも増加。

4.金利動向

  1. (7月の回顧) 7月のバーツ金利は、2年物国債利回りは1.5%台で小動き、また長期10年物国債利回りは1.9%台から2.1%台に緩やかに上昇した。

    好調な米国経済指標が発表される中、リスクセンチメントが改善。

    英国のEU離脱決定後、低下していた米国の利上げ思惑が、再び浮上した。

    米国金利が上昇する中、タイの長期金利もつられて上昇した。

    その後、27日の米国FOMCで、目先のリスクは後退した旨の見解が示されたが、早期利上げに関する、材料が出なかったこともあり、米国金利は低下。

    バーツ金利の上昇も抑制された。

    タイでは、8月7日に憲法草案の国民投票が実施されるが、政府が同投票に関する政治運動を制限していることから、7月中は特段混乱なく、バーツ金利市場では材料視されず。

  2. (8月の展望) タイ経済は輸出が低迷する中、内需も冴えず、政府支出、観光頼みとなっている。

    また、世界経済の回復は鈍く、先行きの懸念が継続している。

    タイ中央銀行は当面政策金利を据え置くことが予想されるため、バーツ金利は上昇しにくい。

5.為替動向

  1. (7月の回顧) 月初、ドルバーツ相場は、35台前半で推移。

    6月の英国の欧州連合(EU)離脱の影響が一服し、落着いた動きに。

    8日に発表された米国雇用統計が、市場予想を上回る強さとなったものの、米国の早期利上げ思惑につながらなかったことから、ドル買いとはならず。

    その後、10日の日本の参議院選挙における与党大勝を受けて、安倍首相が大型経済対策を出すことを発表し市場が好感。

    リスク選好の動きが強まり、外国人投資家資金がタイの株式、債券市場に流入し15日には大台の35.00を割れて、34.915迄バーツは買われた。

    28日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が、早期利上げ期待につながらなかったことから、米国金利が低下。

    ドルバーツ相場ではドル売りとなり、34.80台迄バーツ買いに。

  2. (8月の展望) 世界的な金融緩和継続期待の中、リターンを求める資金がタイに流入している。

    足許、米国経済指標は改善も、FOMC後、米国利上げ思惑は沈静化しており、ドルバーツ相場はドルの上値が重く推移。

    米国の早期利上げ思惑が再浮上すれば、ドル買いバーツ売りに。

6.政治動向

  1. 2014年のクーデターにより旧憲法が廃止されたことから、8月7日に行われた憲法草案の是非を問う国民投票では、賛成派が過半を占めた。

    また、首相の指名投票に上院も加わるべきかを問う追加質問についても、同様に賛成多数となった。

    これにより、軍の支配下にある上院の主導により、軍関係者を首相に選出することが可能となっ。

    新憲法のもとで、民政復帰に向けた総選挙が来年中に行われる見通し。

    民政復帰後の当初5年間は、上院議員は軍の意向を踏まえて任命されるなど、軍の影響を濃く残す内容となっている。

  2. 米国務省は7月1日(米時間30日)、人身取引報告書にてタイの評価を「Tier3」(4段階の最低ランク)から「Tier2ウォッチリスト」へと1段階引上げた。
    特に水産業の強制労働への取締まりの強化を評価。

    タイ政府は米国との関係改善および欧米向けの冷凍食品などのタイ産品の輸出増に期待している。

    なお、ミャンマーは最低ランクへ引下げとなった。
    児童およびロヒンギャ(ミャンマー・バングラデシュ国境のラカイン州北西部に住むイスラム系少数民族)の強制労働などが指摘されている。

  3. 商務省は、外国人事業法違反で警察が摘発したプーケットの旅行関連会社13社の事業許可を剥奪した。

    外国人の参入を規制する旅行関連の事業を営むため、中国人の実業家がタイ人国民証明書を偽造しタイ人になりすまし、会社の登記を行った疑い。

    果物取引においても同様の事態が横行していると見られ、当局は摘発に向け動いている旨を政府報道官が説明している。


当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
詳細記事/統計データ

出典サイト;http://www.jtbf.info/review1608_j.html