タイ国経済概況(20178月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、
タイ投資委員会(
BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会 

1.景気動向

タイ商務省(MOC)は720日、6月の物品輸出額が前年同月比+11.7%の202.8億ドルだったと発表した。
前月の+13.2%に続きプラス成長で2ヶ月連続の二ケタ成長を記録。輸出品目別では、農産物・加工品が29.1億ドルで同比+18.3%の高い伸びを示し、工業製品は162.8億ドルで同比+11.6%を記録し、
4
ヶ月連続のプラス成長となった。
 仕向け地別での増加割合では、中国向けが+29.9%と最大となり、続いて日本向けが+26.5%、米国が+8.2%、EU向けが+5.9%との伸びを記録した。
 また、1月から6月までの輸出額の合計は1,135.5億ドルとなり、前年同期比+7.8%となった。
また、物品の輸入総額では同比で+15.0%の106.6億ドルとなったが、貿易収支額は+69.7億ドルの黒字となっている。
タイ観光・スポーツ省(MOTS)は717日、6月の外国からの訪問者数が前年同月比+11.4%となったと発表。
これは4ヶ月連続の増加であり、2ケタ成長は9ヶ月ぶりとなる。訪問者の国地域別では、中国が同比で+6.6%の76.3万人で1位となり、続いてマレーシアが+16.1%の30.2万人で2位となった、以下インド、韓国、ラオスが続いた。日本からの訪問者数では、+10.0%の11.1万人となった。
また観光収入では、同比+12.1%の1,296億バーツとなり、中国、マレーシア、米国がトップスリーとなった。
タイ工業連盟(FTI)は719日、6月の自動車生産台数を前年同月比▲2.5%の17.5万台と発表した。
また、国内向け生産台数は、7.7万台で同+2.5%。輸出向け生産台数は9.8万台で同▲6.1%となった。
車輌別の輸出向け生産台数では、乗用車が同▲19.6%の36,891台、商用車が同+4.5%の60,775台、商用車の内訳では、1トンピックアップトラックの2ドアが同▲7.7%の6,734台、同4ドアが同+7.7%の43,664台、PPVが同+0.6%の10,337台となっている。
1
月から6月までの自動車生産台数は95万台で前年同期比▲4.3%、うち輸出向けは53.8万台で同▲9.9%、国内向けは41.2万台で同+4.2%となった。
また、FTI担当者は、今年の生産見通しを当初の200万台から190万台に引き下げる可能性があるとの見方を示した。

2.投資動向
タイ政府が進めるチョンブリなど東部3県にハイテク産業中心の工業団地や経済特区を整備する東部経済回廊(EEC)の開発政策委員会は76日、運輸関連のインフラ投資事業3件を承認したと発表。今回承認されたインフラ事業は、マプタプット港、レムチャバン港の整備事業と、2港とサタヒップ港を結ぶ複数鉄道の建設事業で、事業費は総額2,303億バーツとなる。
同委員会は、4月に承認したウタパオ空港拡張事業と、今回の3件を官民連携の優先事業とし、20ヶ月かかる入札手続きを半分以下の期間に短縮することを可能とする。
同委員会は、今後5年間で30社の大企業をEECに誘致すると発言した。
タイ工業団地公社(IEAT)のウィラポン総裁は、カンボジア国境東部サケオSEZ内に造成中の第1期工業団地が8月にも開業すると発表した。
区画は134ライ(約21平方メートル)となる。入居する企業は主に衣料、農産加工品、プラスチック製品を生産する中小企業が中心となる。
同団地では、一定期間用地の賃貸料や管理費の減免が受けられるとのこと。
ただ、現在同地区でタイ投資委員会(BOI)から投資認可を取った企業は3社に留まっている状況。
原因として、工場の操業にあたり義務付けられる環境影響評価(EIA)の取得が遅れている事や、十分な労働力が確保出来るか確証が持てないことがある。

3.金融動向
タイ中央銀行の発表によると20176月末時点の金融機関預金残高は182,566億バーツ(前年同月比+3.9%)、貸金残高は169,086億バーツ(同+3.4%)といずれも増加。

4.金利動向
7月の回顧) 7月のバーツ金利は、2.442.57のレンジ内で上下するも結果的に月初の水準に戻った。
月初タイ10年物国債金利は2.51%あたりでオープン。
前月の欧米主要中銀のタカ派発言を受けて欧米金利は上昇が継続した一方、バーツ金利は上値重く推移し、タイ10年物国債金利は2.44%まで低下。
タイのインフレが2か月連続でマイナスとなる中、タイ中銀金融政策委員会(MPC)への警戒感が理由と考えられる。
なお、5日開催されたタイMPCでは事前予想通り政策金利は据え置きとなった。
その後、欧州中央銀行(ECB)議事要旨の政策変更を意識した文言から欧米金利が一段と上昇。タイ10年物国債金利も連れて一時2.57%あたりまで上昇。
しかし、中旬に行われたイエレン米連邦制度準備理事会(FRB)議長による議会証言で、インフレの先行き不確実性についての発言が材料視され米金利が低下するとバーツ金利も低下。
その後も米消費者物価指数(CPI)が軟調な結果となり米金利が低下する中、バーツ金利も低下するも低下幅は限定的であった。
米上院でオバマケア廃止に向けた動議が可決したことで、トランプ政権が掲げる財政支出を伴う経済政策実行への期待から米金利が大きく上昇、その後の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文でインフレの現状認識が下方修正されたことがマーケットでハト派的に捉えられ米金利は反落。
この一連の米金利動向に連れてバーツ金利も上下したが値幅は極めて限定的であった。
月末にかけては、あまり動意なくタイ10年物国債金利は2.49%あたりとオープンとあまり変わらない水準でクローズ。
8月の展望) タイ中銀は先月下旬にクレジットカードと個人ローンの規制強化措置を発表した。
家計債務の膨張と若者の債務不履行といったタイの家計の抱える財務の脆弱性に対処することが目的とのこと。
低インフレが続く中ではあるが、景気は回復基調であることから利下げカードは切りづらく、本規制強化に踏み切ったものと推察される。今月は16日にMPCが開催されるが、今回も現状維持との見方が主流。
バーツ金利は引き続き米国動向を中心とした外部要因次第と思われる。

5.為替動向
7月の回顧) 7月のドルバーツ相場は、米国のインフレ圧力は抑制されているとの見方が強まり年内利上げ観測が後退したことを主な背景として大きく下落。
月初33.93でオープンしたドルバーツは、欧米金利の上昇を手がかりとして一時34.13まで上昇。中旬の米議会証言にてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が足元のインフレは一時的としながらも先行きの不確実性についてコメント。
また、次回利上げはインフレ動向次第、バランスシート縮小は「比較的早期に」開始としながらもインフレ動向を注視と発言。
これを受けて年内利上げ期待が後退し、米金利低下。
ドルバーツも低下し再び34.00割れに。議会証言以降注目が高まる中発表された米消費者物価指数(CPI)が軟調な結果となり、ドルバーツは大きく下落。
下旬に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会後の会見にてドラギ総裁が楽観的な物価見通しを示し、量的緩和解除について今秋にも協議する可能性を示唆したことから、ユーロが上昇。
ドルの対ユーロでの下落がドルバーツにも波及し、さらに下値を模索する展開となり33.50割れに。
米上院でオバマケア廃止に向けた動議が可決したことで、トランプ政権が掲げる財政支出を伴う経済政策実行への期待が高まり米金利上昇したことからドルバーツも小幅ながら上昇し、一時33.50台を回復。
その後開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文でインフレの現状認識が下方修正されたことがマーケットでハト派的に捉えられ、再び米金利低下。
これを受けたドルバーツは大幅に下落。一時20155月以来の水準となる33.27まで下落し、33.29でクローズ。
8月の展望) FOMC声明文の文言変更は予想の範囲内で、総じて変わらなかったもののマーケットではハト派的に捉えられ、年内利上げ期待が剥落しドルバーツも一時33.30割れの水準まで低下。ドルバーツの変動要因も従来通り米金利動向が主軸であり、足元の値動きもバーツ高というよりむしろドル安が進行した。
中銀関係者からは、今のところ通貨高はタイの貿易や経済成長に影響を与えていないが、今後に備えて為替リスクヘッジを推奨とのコメントがあった。
米国のインフレ期待が上がってこない限り米金利も上昇しづらい中、米政権での混乱も続いておりドルバーツの上値は重くなると予想される。また、今後のインフレ関連指標はより注視が必要。

6.政治動向
タイ政府は74日、623日に施行した新外国人労働法の罰則条項の適用を180日間延期し、201811日とすることを決めたと発表。
同法では、違反した雇用者には最大80万バーツの罰金などが課せられるなど、罰則が強化されている。
国家平和秩序評議会(NCPO)報道官の発表によると、今回の措置は、同法の施行で、大量の不法労働外国人が一斉に帰国したため、混乱を避けるための措置で、現首相が超法規的な権限を行使できる暫定憲法44条を発動したとのとこ。
 また、同法は、低賃金で外国人を雇用している中小企業や飲食業、建設業などに、大きな影響が出るとの声が上がっている。
既に3万人の不法就労外国人が帰国している。
タイ財務省物品税局は、916日に適用される新物品税率の一部の内容を施行前に公表すると発言した。
事前に公表される品目は、自動車、アルコール以外の飲料、バッテリー、クリスタルガラスで、国民が買いだめすることはない品目であることが理由。
特に自動車のピックアップトラックの税率が低く、販売台数が他の車両に比べ多い割に税収が伸びていないことが問題視されている。今回の変更は、タイ政府が物品税の徴収を強化するための取組みで、現在、税額を算出する際の基準が、工場出荷価格とCIF(運賃、保険料込み輸入価格)を元にしているが、企業グループ間で引き下げられている疑いがあり、今後は価格操作が難しい小売価格を基準に税額を決定するとのこと。

当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

http://www.jtbf.info/review1708_j.html