タイ:外国人事業法の正しい理解(2)―三菱東京UFJ ...

(前回レポートは以下 URL をクリックして本文をご参照下さい。)

http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20150320.pdf

概要

外国人事業法における規制業種リストの「リスト 3」に属する規制業種(商品売買やサービス提供)を外

国人のステータスで行いたい場合には、他の例外規定を適用できない限り、同法に基づく外国人事業許可

を取得する必要があります。

今回は、前半で同事業許可を取得するための条件および手続きを概説します。

後半では、タイの外国人事業法は、資本の半分以上が外資である会社(外国人)がタイ国内で商品売買や

サービスを行うことを禁じている意味をマクロ的に解説しました。

知らないうちに外国人事業法違反となっているケースがありますが、なぜ違反してしまうのでしょうか。

この解説を見れば理解していただけると思います。


1.外国人事業法で規制されている事業「リスト 3」の事業許可

外国人事業法で規制されている事業は「リスト 1」「リスト 2」および「リスト 3」に分けられています。

「リスト 1」の業種は完全にタイ人によって守られるべき業種、「リスト 2」の業種は、内閣(閣議)

の承認に基づく商務大臣の許可を取得した場合に外国人(資本の半分以上が外資の法人)が従事すること

が認められる業種、「リスト 3」の業種は、外国人事業委員会の承認に基づく商務省事業開発局長の事業

許可(外国人事業許可、後述)を取得した場合に外国人が従事することが認められる業種です(外国人事

業法上の「外国人」の定義は前回レポート参照)。

「リスト 2」と「リスト 3」の業種に関する事業許可を「外国人事業許可」(FOREIGN BUSINESSLICENSE:FBL)

と呼びます。

今回は、この外国人事業許可に関する解説をしたいと思います。ただし「リスト 2」の業種は、武器やタイ

伝統工芸製造販売、農林水産業、鉱業など通常外資企業が行う業種ではなく、かつてこれらに関して

外国人事業許可が申請されたことはないようですから、今回の解説は「リスト3」の業種に関する事業許可に

限定します。

(1)「リスト 3」の業種に関する外国人事業許可とは

外国人が従事できない「リスト 3」の業種は、外資企業にとって重要な「タイ国内における商品の

小売り(注 1)、卸売り(注 2)、サービス業」です。

(注 1.2)「小売り」「卸売り」双方に「資本 1 億バーツ」の例外規定があり、別々の取り扱いとな

るため、両者の区別が重要なポイントになることがあります。

「小売り」とは「商品を最終消費者に販売する業態」であり、「卸売り」とは「商品を購買した顧客が

さらにその商品を他の卸売業者や小売業者、最終消費者に転売する業態」です。

なお、ある製造業者に原材料を販売する場合には卸売りに分類され、同じ製造業者に製造工程で

使用する工具や機器を販売する場合には小売りに分類されます。

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外国人のステータスで「タイ国内における商品の小売り、卸売り、サービス業」に従事したい場合

には、他の例外を適用できない限り、外国人事業許可、すなわち外国人事業法第 8 条に基づく「外国

人事業委員会の承認に基づく商務省事業開発局長の事業許可」を取得しなければなりません。

「タイ国内における商品の小売り、卸売り、サービス業」に関する外国人事業許可は、どんな事業

に関しても取得できるわけではなく、地場産業に悪影響がないと判断できる場合にのみ取得できます。

具体的には、外国人事業許可を取得できる事業は、以下の三つの条件を満たす必要があります。

@ 取り扱う商品またはサービスを特定できること

A 顧客を特定できること

B 地場産業と直接競合しないこと

これらの条件を満たす事業の例としては以下の事業が挙げられます。

・ 関係会社に対する管理サービス(会計、法務、マーケティング、研修など)

・ 関係会社に対する金銭の融資、不動産の賃貸

・ 関係会社に対する物品の販売

・ 従業員に対する金銭貸し付け、社内販売

・ 製造製品の修理サービス

・ 機械設備製造会社の製品に限定した据え付け、修理、保全サービス

・ タイで製造していない精密機械、医療設備の輸入販売

・ タイで製造していないハイテク製品の輸入販売

・ 一般に「駐在員事務所」(REPRESENTATIVE OFFICE)と呼ばれる事業活動

・ 一般に「地域統括事務所」(REGIONAL OFFICE)と呼ばれる事業活動

・ タイの政府機関との契約に基づく建設工事プロジェクト

(2)事業許可条件と事業許可申請手続き

[事業許可条件]

外国人事業法は、外国人が外国人事業許可を取得するための事業許可条件として、以下の条件を規

定しています。

@ 申請書で示される 3 年間の事業収支計画における「年間平均支出額」の 25%か 300 万バーツの

いずれか大きい金額以上の最低資本が投資(増資)されなければならない。

A 当該最低資本は、外国人が外貨でタイ国内に持ち込まなければならない。

B 当該最低資本は、事業許可取得後 3 カ月以内にその 25%以上、2 年以内に 50%以上、3 年以内

に 100%がタイ国内に持ち込まれなければならない。

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[事業許可申請手続き]

外国人事業許可申請手続きは、おおむね以下のような手続きの流れとなります。所要日数は、提出

書類や情報に誤りがなければ、通常 4 カ月程度です。

@ 商務省事業開発局外国人事業課による申請書・添付資料チェック

A 同課による申請書の受理

同課の審査係による審査

B 外国人事業小委員会による審査

C 外国人事業委員会の最終審査

D 外国人事業許可証の交付

なお、外国人事業許可申請に必要な資料や情報は、おおむね以下の通りです。

・ 申請書式

・ 会社登記簿謄本、株主リスト

・ 会社代表者のパスポート

・ 会社所在地図

・ すでに何らかの外国人事業許可を取得している場合その事業許可証

・ 直近 3 年間の財務諸表、法人税申告書と領収書

・ 申請する事業内容に関する説明書(申請者名、事業内容、商品/サービスの価格設定ポリシー、

契約に基づく場合契約書、所定書式での資本構成・財務状況・市場、既存事業の内容、技術移転、

計画、雇用計画、タイへの影響、関係会社への商品販売・サービス提供である場合の関係会社

リストなど)

・ その他必要と認められて提出を要求された資料や情報

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2.外国人事業法の位置づけ

タイで資本の半分以上が外資の会社を設立した場合、外国人事業法の理解が最も重要となることを強調

してきましたが、それでもその重要性を完全には理解されなかったかもしれません。

知らないうちに外国人事業法を違反してしまうのはなぜでしょうか。

外国人が商品を仕入れ販売すること、少しでもサービスを提供することが禁止されているということは、

日本では考えられません。

今現在行っている事業に問題があっても気付かなかったり、また、同じ事業を継続することは引き継ぎ者に

とって当たり前のことだからでしょう。

今回は、外国人事業法の総集編として、外国人事業法の各論を排除し、外国人事業法の位置付けをマク

ロ的に見て、皆さんの脳裏に焼き付けたいと思います。

(1)外国人事業法の位置付け

[民商法典]

民商法典は、株式会社の設立や運営に関して規定しています。外資規制に関する規定は一切あり

ません。

会社の登記事項としては、会社の形態(株式会社など)、会社の機関(株主総会、取締役、

取締役会)、会社住所、会社目的、株主と資本などがあります。

[外国人事業法]

外国人事業法は、資本の半分以上が外資の会社を外国人と定義し、外国人に対して商業(商品の

小売り、卸売り)およびサービス業に従事することを禁じています。

つまり、登記事項のうち、会社目的(活動)、株主、資本は外資規制の対象です。

資本の半分以上が外資の会社は、会社全体に外国人事業法上の外資規制が及ぶことに注意しなけ

ればなりません。

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[投資奨励法]

投資奨励法は、政府の経済政策に従い設定した奨励方針に基づき、特定の事業(奨励事業)に対

して特典(恩典)を与えることによって奨励し、投資を誘発することを目的としています。

投資奨励法に基づき設置されるタイ投資委員会(Board of Investment:BOI)は、事業の種類、

立地、資本など奨励条件を設定して、事業ごとに特典を付与しています。この BOI の奨励条件は、

会社の会社目的、会社住所、株主と資本に影響を与えます。

BOI が付与する特典には、法人税の減免、関税の減免、労働許可・VISA への便宜、土地所有の

許可および外国人事業法による外資規制の解除があります。

特に外国人事業法との関係においては「BOI が奨励するのは会社そのものではなく、各事業である」と

いうことがポイントです。

BOI は奨励事業に関する外国人事業法上の外資規制を解除する権限を持っていますが、会社全体の

外資規制は解除できないのです。

(2)要注意事例

勘違いを起こしやすい事例を紹介しましょう。

会社 X は、国際調達事務所(International Procurement Office:IPO)事業について BOI から奨励

を認可され、外資 100%で設立された会社である。

会社 X は、自動車部品を輸入、あるいはタイ国内で仕入れ、自動車部品製造会社に販売している。

会社 X は、順調に売り上げを伸ばしているが、駐在員が 3 代目になった時点で会社の事業を見直して

みると、以下の業態となっていた。

@ 原則的に倉庫で在庫を保管しているが、在庫として保管しない部品、通関後、港から顧客に直送

している部品が次第に多くなっている。

A 部品製造に必要な金型や工具も輸入し、販売するようになっている。

B 一部の部品をタイ国内のディストリビューターを通じて顧客に販売している。

C 時には、仲介手数料として本社や他社からコミッションを受けることがある。

このような状態になってしまうことは、簡単に理解できると思います。

BOI は IPO 事業に関してのみ外国人事業法の外資規制を解除しています。では、IPO 事業とはいっ

たい何でしょうか。IPO とは「製造業密着型原材料在庫商社」です。

すなわち、

@ 製造業者にしか販売できません。

A 原材料しか販売できません。

B 在庫を保管して販売しなければなりません。

C コミッションを受け取ることはできません。

多くの会社が IPO 事業のみを行うことを前提として、外資 100%の会社を設立しますが、初代駐在

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員から 2、3 代目へと事業が引き継がれていくうちに「わが社(会社全体)が BOI からの奨励を受け

商社活動ができる」と勘違いしてしまうのです。

繰り返しになりますが、外国人事業法の規制は会社全体に及びます。

投資奨励法に基づく外資規制の解除は、奨励事業に対してのみ認められます。

ですから、奨励事業の範囲をよく理解しないと、いつの間にか違法状態になってしまいます。

規制事業に従事した場合、3 年以下の禁錮、または 10 万バーツから 100 万バーツの罰金、または併

科、という刑事罰が規定されています。これが外国人事業法上のリスクです。

記事提供:MOTHER BRAIN(Thailand)CO,LTD.

Managing Director 川島 伸

(2015 年 1 月 5 日/2015 年 2 月 2 日作成)

参考サイト:

タイの外国資本規制

―外国人事業法の概略と最近の動向

KPMG 藤井康秀

https://www.asean.or.jp/en/invest/about/eventreports/2013/2013-03.html/4_Mr.%20Yasuhide%20Fujii-KPMG.pdf/at_download/file