3.タイの大学法律学部で学ぶ法律学習の目的と手法について

 日本の国立の法学部を卒業し、定年まで鉄鋼企業に勤めて、定年後、タイに移住してラムカムヘン大の法学部を卒業したMさんにタイの法学部で学ぶ

目的なり、学習方法について取材した。


以下は、その概要である。


「@ 私の周囲でそれなりにまじめに法律を学習している学生たちの殆どが、法律関係の職に就くことを希望していました。


ここで法律関係の職とは、裁判官、検事、警察・裁判所書記官等の公務員や弁護士(タイではこの弁護士になるのは、法学部さえ卒業すれば比較的簡単)

など、広く法律学をバックグラウンドにしている職業を指します。

特に女子学生にはこの傾向が強い。

タイでは、公務員志向が強く、企業などの求める法務の実務家なども、まず(比較的簡単に取れる)弁護士資格を取ってからの方が多いと思います。


Aこのことは、ラムカムヘン大の法学部カリキュラムを見ても明らかです。指摘された科目(憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、会社法)は、

すべて必須科目です。

例えば日本の司法試験では、民訴と刑訴はいずれか一つを選択できますが、ここでは二科目とも必須です。

それ以外の必修科目には、裁判所設置法(各裁判所や裁判官の権限法)、破産法、労働法(保護法、関係調整法など含む)、行政法、証拠法、

所得税法、法曹家倫理法(弁護士法や裁判官倫理法等)、土地法、知的財産法(著作権法、意匠法含む)に加えて、裁判資料作成科目(告訴状、

嘆願書等各フェーズで必要とされる法律文書などで、日本では司法研修所で教える。)も必須です。


これらを見ても、タイの法学士に求められる素養は何かが明白だと思います。それ以外にも法哲学や国際公法・私法、国際貨物運送法なども必須です。

勿論、各科目を広く浅くとなっているのは、止むを得ないと思います。


Bタイ法は、解釈の余地を極力排するために、条文に構成要件を書き込むため、その長さが半端ではないのです。

そしてそれらが使えるかを試すのが、法律科目の試験ですので、試験問題は、常にケーススタディーです。

即ち、現実事象の中で、条文をどう現実的に適用して法的に正しい結果を導き出せるか を試験するのです。


例えば、甲、乙、丙がこれこれして、こうなった。それぞれの罪状を論ぜよ。

それぞれ、結論は何罪、理由は、どのような根拠があってどの条文をどう適用したからとか。そして該当条文を書かせます。

だから、大事な条文は暗記が必要。 従って、タイ人は法学部の学生は長い条文を暗記しないといけないから、大変だといって敬遠する傾向にあると思う。」


このことから、タイ国において大学で法律学部を学んだといっても、日本の大学とは内容が異なっている、という事実を考えるべきである。

現実に、弊社でも今までも法学部の卒業生を採用してきたが、法律の条文は良く知っているが、いざ、現実の適応を聞くと、

法律事務所に聞いてほしいなど、常識的な判断は難しいこともあった。


また、2.で紹介した産業人材の現状でも、クリテイカルシンキングが難しい、という現実から企業としての社内教育では何を取り組まねばならないか、

見えてくるのである。


(注:クリティカル・シンキングとは、あらゆる情報に対して批判的な思考を働かせて分析する習慣のことを指します。)

            

         出典:OVTA 海外情報プラス 作成年月日2015年1月

        http://ovta.or.jp/info/asia/thailand/tha_150101_1.html