会社設立と株主


1 会社と株主の関係
会社の所有者は株主です。
かって、会社設立をする場合7名の株主を必要としました。
タイ人の会社はもちろんのこと、日本から進出した人が、7名もの名前を集める事は大変なことでした。
そこで、法律事務所はお客の要望に応じて7名のダミーを用意するに至りました。
現在では株主が3人になったものの、それでも大変です。
現在日本では1人の株主で会社設立が可能となっています。
しかしタイでは、一人の株主で会社設立はできないでしょう。仮に可能になったとしてもタイ人の株主しか認められないでしょう。
またこの株主(発起人)は自然人に限られていますので、法人として会社設立の際の株主としてなることは、認められないでしょう。

2 いわゆる現地法人(略して現法)と言われる内容。
企業が海外進出する際、現地のリサーチから始まります。
容易なのは現法を作らずに、現地の企業と代理店契約を行い商品販売してもらうことです。
または、委託生産方式により製品、商品を生産依頼する方法があります。
この2つの方法は日本とタイ国ということで、国をまたいだ支払決済が毎回必要で面倒です。
現地法人の設立により、現地で支払決済が行われるため取引きが容易になり相手から好まれます。
また、現地法人の設立により税制面でも複雑な手続きから解放されます。
かって駐在員事務所設立が流行したことがありますが、現在ではこの国の機関を除いてほとんど見られなくなりました。
なぜならこの駐在事務所は規制が多い上、現実の活動に支障を来すからです。
最近大企業のため地域統括事務所(IHQ)や地域統括本社等、株主100%の外国法人が認められてきています。

3 会社設立の方法
商業省のビジネス開発局の会社設立関係の窓口にて申請すれば容易に認められます。この分野は専門業者のテリトリーですので、申請の具体的内容は省略します。
問題は設立発起人として、タイ人のみか、または外国人を入れるかどうかです。
もし、設立発起人に外国人(自然人)を入れた場合、タイ人のタイ人設立発起人に対して株主比率に見合った資本金の相当額を銀行からの預金証明書として提出しなければなりません。
こうすることによって、合弁の場合のダミーを予防しています。
ダミーを用いる場合、発起人はすべて3名のタイ人とし、設立後株主比率、名義を変える方法をとることになります。

4 会社設立の際の49%51%について
次の章で述べる「外国人職業規制法」に関係してきますが、株主が49%51%により会社の扱いが異なってきます。
つまり、外国人株主が49%以内の場合タイの会社として扱われます。
しかし、49%を超えると外国人企業として扱われ事業目的が制限または禁止されます。
普通タイに進出してきた日系企業は、外国人が49%以内の株主となっています。
しかし、BOI企業や特別に許可を受けた大企業は株主比率が49%を超えて許可を得ています。

5 外国人職業規制法と会社設立
タイ国の産業育成、国家的政策により外国人の職業を禁止、制限しています。
国家として外国資本により、国内産業や安全保障にかかわる分野での支配を危惧するからです。
具体的には、業務内容と株主の比率により会社設立を制限しています。
代表的分野として金融、通信関係が挙げられます。この分野は見方によっては、閉鎖的分野といえます。

6 会社設立の種類
会社の種類として、私的株式会社、パブリック株式会社、上場会社の3種類あります。
それぞれが、それぞれの法律により規制を受けています。
これは株主や一般投資家の保護を目的としていますが、同時に一般国民も関係しています。
パブリック株式会社、上場会社についてはより厳しいルールが課せられていますので、その分野を担当する法律や会計などの専門家が必要とされています。

7 合弁会社と株主

たまたま合弁会社の役員として赴任した方は、合弁契約書を見たことがあるでしょうか。
その契約書は、どこに保存しているのでしょうか。
何十年前に合弁した会社は、原本が見つからない会社も存在することでしょう。
この契約書はパートナーとの約束事、つまり「会社の憲法」に相当するもので超重要書類です。
この契約書の中に、特記としてして記述してほしい項目として社長職と会計職があります。
タイ側は51%、日本側49%の比率でどちらかのポジションを得ていない契約書を見ることがありますが、これは大変日本側に不利な内容です。
実際このような契約での合弁企業の日本人は、一年中泣かされています。
どちらか一方のポジションを得ていない場合、要求するか、解消話をつきつけるべきでしょう。
また、この契約書の中に株主比率、ポジションなどいろいろ書かれている事でしょうが、特に重要な項目は合弁解消が存在するか否かです。
合弁は、結婚と同じようなもので最初はハネムーン気分ですが何らかの理由で関係が悪化してきた場合、最悪の場面を迎えることになります。
当然のことながら、双方の弁護士がその立場に立ってチェックしていると思います、
その場合、それをチェックする弁護士、能力の差があり、それは法律事務所の問題ではなく、それを担当して実行する弁護士自身の資質に関わってくるでしょう。
この点を依頼者は抑えるべきでしょう。
法律事務所に依頼する場合、誰が担当してくれるかまで、はっきりとさせてから契約した方が良いでしょう。

よく問題になるのは契約の当人が死亡し、その息子の代にかわり引き継がれた場合です。従来どうりの内容なら問題はありませんが、一方的な条件変更提示があると、大変です。


8 タイ、日本の会社と株主構成
タイでは会社ごと必ずオーナー株主が存在します。
日本では、資本と経営の分離により筆頭株主は表面上経営に口出ししていません。
タイでは、筆頭株主すなわちオーナーファミリーが経営権を掌握して経営しています。
タイ人に日本の上場会社にはオーナーファミリーが存在しないことを説明しても理解してくれません。
なぜなら、タイの上場会社は必ずオーナーファミリーが存在しているからです。
このファミリー会社はボード(取締役会)を身内で抑えファミリーによる世襲制になっています。

9 タイと日本の会社経営について
すでに述べたようにタイの会社はオーナーファミリーが会社経営を行っており特に変化がない限り世襲制になっています。
これは社長とボード(経営陣)による経営を進めており、大株主である限りはそのポジションは変わりません。
よって、入社した一般の社員が取締役に就任するということは稀なケースになります。
一方日本の会社は、ファミリーによる経営はごく少数です。
通常は一般社員として入社した中から、経営陣となりその中から社長として選出されます。
タイ人にとってはうらやましい話です。
以上の話は、タイの会社の話ですが、例外的に日系企業は別です。
建設業のタイ大林組は生え抜きのタイ人が社長に就任しています。
これは特記すべきことです。
またトヨタとか本田などは、タイ人を取締役に引き上げて企業の現地化を図っています。


10 登記簿謄本に代表取締役の名前がない
登記簿謄本を見たことがありますか。
赴任の方でも、総務関係の方は見たことがあるでしょうが、それはすべてタイ語です。
よってタイ語が分かる人のみ、その存在をタイ語で書かれた書類として認識することが可能です。
その登記を謄本には、取締役名が書かれています。
この取締役名は常勤、非常勤の区別はありませんし、かつ監査役の名前もありません。
しからば、どう対処しているかです。
取締役名の下の項に「有効なサイン権」と言う記述があり、この項で会社としてのサイン権者を特定しています。
また、このサイン権者の表記でも多種多様になっています。
代表的な例として、1人の取締役に権限を持たせる、または2人の取締役の連名の中より一人が、さらにはAあるいはBの取締役のうちのどちらか1人のサインで権限が有効とする、など
いろいろです。
日本では1人のみ権限を持たせていますが、タイはいろいろな方法による権限委譲方法があり、それだけ選択肢が多く存在するということです。

11 ケース1 資本金を振り込まない名義だけの株主が、登記簿に記載されていることをもって裁判所へその権利を主張したらどうなるでしょうか。
(回答)
株主としての要件が備わっているので訴える資格はあります。
しかしこの場合その訴え人の弁護士が報酬をもらって訴え人の弁護を引き受けるかどうかです。
通常の弁護士は、実際に株主として出資していない場合取り上はしません。
中には悪い弁護士がいてお金のために訴えに加担します。
訴えて裁判になると、裁判官は双方の弁護士を招いて和解するように進めます。
最終的に裁判官が判決するようなことはしないでしょう。
判決になじまないからです。
いずれにせよ、金銭のやり取りで和解し、合意内容を裁判官が読み上げて判決となります。
この判決文は決して判例文として後の人に援用される事はありません。
あくまでもケースバイケースの判例として残るだけです。

12 株主の寝返りで会社を乗っ取るケース
通常日本側49パーセント、タイ側は51%の株主構成ですが、タイ側の株主が一致団結して会社を乗っ取ることができます。
このようなケースは、よく耳にします。
方法としては51%の株主が談合して、裁判所に対して株主総会の開催を要求し、そこで株主総会が開かれ、その席上取締役を解任する決議を提出するという手順です。
こうなると、もうどうすることもできません。
これの予防策として、49%51%の比率の差2%はどんなことがあっても死守しなければならない要件です。
お金を出さない株主が。まんまとその会社を乗っ取り経営権を得る、これは泥棒と言えますが会社はそのような危険があるということを事前に知っておくべきなのです。
そして事前に対策を立てておくべきなのです。

13 合弁でサイン間より会社が乗っ取られたケース
スクムビットにあるコンドミニアムの合弁オーナーが会社から追い出されてしまいました。
調べてみると、サイン権者が複雑に書かれておりそのサイン権に基ずき、社長を解任され、資産をとられ、あげくのはて、刑事事件として被告の立場に立たされたと言う酷い話です。
詳細は書きませんが教訓として言える事は、合弁契約を交わす場合その前に自分側に立った弁護士またはタイ語のわかる人に内容をチェックしてもらうことです。
このチェックを怠たったばかりに日本から持ち込んだ資金無となり、裸同然でタイから追い出されたと言う話です。

2016.11.13 UP