ASEAN 諸国における会計制度の実態把握調査

 


2006 年 3 月


独立行政法人 中小企業基盤整備機構



調査概要................................................................................................................................4
第 1 章 アセアン 9 カ国の基本データ ...                      .7
第 2 章 アセアン 9 カ国の会計制度 ..............................................................................31
第 3 章 アセアン 9 カ国の会計制度比較 ................                75
第 4 章 アセアン 9 カ国の税制度 ....................................................................................87
第 5 章 アセアン 9 カ国の会計及び融資運用状況 .........................................................125


T.タイの会計制度


1. 沿革

タイの会計制度は、従来アメリカ合衆国の会計基準であるGAAPUS(Generally Accepted Accounting Principle US)に準じていたが、1997 年の通貨危機を受け、IMFが援助を行う際に国際化が要求されていた。

2000 年、既存の会計基準を全面的に改訂し、国際会計基準(International Account Standard:IAS)に準拠したタイ会計基準(Thailand Account Standard:TAS)が

採用された。

2. 概要

1) 会計基準名称: Thailand Account Standard

2) 導入年: 2000年

3) 設定機関: タイ公認会計士協会(ICAAT)

4) 担当行政機関: タイ商務省

5) 関連法: 会計法

6) 会計通貨: タイバーツ

7) 会計言語: タイ語、英語(タイ語翻訳添付)

8) 帳簿保存期間: 7年

9) 適用対象: 全事業体4

3. 会計実務の特徴

1) 会計書類保存義務

従来の 5 年保存から、7年に変更された。

2) 会計言語の指定

英語やコンピューター用コードも使用可能としているが、どの場合もタイ語翻訳を添付する必要があり、タイ語による会計書類の作成は必須。

4 事業体:タイ商務省が定める事業体は以下の5つに分類される。公開株式会社(Company Limited)、非公開株式会社(Company Limited)、共同企業

(Partnership)、外国企業の支店・駐在事務所、個人事業。 33

3) 適用対象

上場・非上場、大企業・中小企業、個人事業を問わず、全ての事業体に適用される。上場企業である公開株式会社は、会計の規準が株式取引所の規則により定められているが、会計法に則ったタイ会計基準が優先的に適用されることになる。現在、中小企業向けの会計基準は制定されていない。


4) 会計報告


株式会社及び共同企業5は決算日から5ヶ月以内に、公認会計士の監査証明を付した財務諸表を、商務省商業登録局会計事務所(地方の場合は県商業事務所)へ提出しなければならない。

5) 財務諸表の様式

財務諸表の様式については、2001 年 8 月 3 日付商業登録局告示が出され、登記済みパートナーシップ、非公開株式会社、公開株式会社、外国の法律で設立された法人、事業共同体の5種類に分けて様式が定められた。

6) 外部監査対象

外部監査を要するのは、公開株式会社及び非公開株式会社。但し、非公開株式会社で年間売上高が 3000 万バーツ未満の場合は税務局の判断によって対象とならない場合がある。
また、以下の条件を満たす登記済みパートナーシップは、公認会計士の監査報告は不要となっている。

資本が 5 百万バーツ以下

資産が 3 千万バーツ以下

売上が 3 千万バーツ以下

7) 会計担当者の資格

@ タイ国内に居住

5共同企業(Partnership):2 人以上の共同経営事業体でパートナーシップと表現される。非登記普通共同企業(Unregistered Ordinary Partnership)、登記済普通共同企業(Registered Ordinary Partnership)、有限責任共同企業(Limited Partnership)の 3 方式がある。いずれの場合も法人とは定義されていない。

A タイ語の能力を有する

B 会計法による禁固刑の最終判決を受けていない

C 登録資本金が 500 万バーツ以下、総資産又は収益 3,000 万バーツ以下の場合、職業高校、短大で会計に関する学科を終了していること

D 上記を超える場合や公開株式会社、外資企業、銀行、金融業、証券、保険業、BOI認可企業については、会計学士又は同等の学位を有すること

8) 罰則規定

監査人に対する罰則規定は、資格剥奪及び場合によって禁固刑。

注)会計責任者とされる日本人派遣員も、会計書類が不備な場合処罰の対象となる


9) 公認会計士6 の記帳代行

監査人(公認会計士)による税務申告代行と経理書類記帳代行の兼務を認めている。

4. 留意すべき会計基準項目

会計基準項目 規定

有形固定資産

@ 減価償却方法

A 耐用年数

B 上記方法の変更の取り扱い

@いずれの方法も容認されているが定額法が一般的。

A有形固定資産の経済的耐用年数による。

B原価償却方法の変更は会計方針の変更として取り扱われ、耐用年数の変更は通常見積もりの変更として取り扱われる。


設備投資に伴う借入金利息の資産化 借入金利息の資産化は企業の任意で選択できる。(国際会計基準と同様)

6 タイ語による正確な呼称は公認会計監査人

会計基準項目 規定

無形資産

@ 容認される繰延の要件と限度額

A 試験研究費の取り扱い

B ソフトウェアの取り扱い

@ 支出の効果が将来にわたることが合理的に証明できる場合には繰延が容認される。

ただし、2004 年度からほぼ国際会計基準が導入され、繰延の要件が厳格となる。

A 試験研究費は費用処理が要請される。が、実行能なものは資産化が容認される。

B ソフトウェアは企業の任意により繰延か費用処理か選択できる。

長期請負工事契約にかかる収益認識 進行基準(国際会計基準と同様)外貨建取引について

@ 外貨建資産負債の換算基準

A 海外子会社の財務諸表の換算基準

@ 期末日レートによる換算。

A 資本の部を除き期末日レートによる換算。

年金債務の会計 年金債務の時価評価は行われていない。また当該会計基準についての導入予定もない。.

ストックオプション制度 ストックオプションの実施は法的に可能であるが、実施している企業はほとんど無い。

またその会計処理についての規定もない。

特別損益、異常損益項目の開示に関する規定 国際会計基準(IAS8)と同様。

税効果会計 タイ国際会計基準 56 号に規定があるが強制適用は 2007 年1月1日からである(任意適用は可)内容的には国際会計基準と同様。

5. 普及状況

適用対象が個人事業体まで及ぶため、制度としては非常に普及していると言える。法人に関してはほぼ完全な普及率であるが、個人事業体に関しては、実際

にはほとんど普及していないのが実態である。

これは外部監査の必要性が無いことも原因の一つだが、タイの会計制度自体が大企業のそれと同様の内容を強制しており、個人事業体にとっては人材面でも

実行不可能である。

6. 課題と問題点

1) 公認会計士の人材不足タイにおけるローカル中小企業だけを見ても 160 万社超と非常に多く、一方、公認会計士は約 9,000 人と圧倒的に不足している。

監査手続き及び事務所内手続きが過度に厳格であることに加え、公認会計士が担当する企業数が多すぎるため、会計監査には長期の時間を要する。

過去には一人で2万社の監査という実行不可能な監査証明に署名したとして資格を剥奪された公認会計士が新聞をにぎわせたことがあった。

2) 中小企業及び個人事業向けの会計制度

国際会計基準に完全に準拠する方向にあるタイの会計基準を、大手企業のみならず中小企業にも適用することは極めて困難であるとの認識から、会計基準を大手企業と中小企業とで区別し、中小企業向けの会計基準を策定する必要もあるとされ、現在、タイ公認会計士協会(ICAAT) が準備を行っている。

7 また、中小企業向けの会計制度が無い為に、公認会計士への負担(担当企業数)が重くのしかかり、監査の公正さと迅速な手続きを妨げている弊害も報告されている。
8
3) 会計基準を遵守しない家族経営の形態が多いタイにおいては、経営者、会計担当者、公認会計士との間で親密な関係が築かれ、組織的に会計捜査が行われる場合も多い。

小規模企業では会計処理を外部に委託することが多く、経営者自身に会計上および自社の経営上の問題点を気付きにくくしている等の問題点もある。

4) 会計会社による記帳代行

多くの中小企業が会計業務を外部の会計会社に委託しており、会計法により監査人(公認会計士)による税務申告代行と経理書類記帳代行の兼務を認めているため、不正会計や帳簿操作の温床となっている。

7 タイ公認会計士協会によると、ISAA(UNCTAD の研究グループの一つで会計を取扱うもの)の定期会合でも、中小企業会計の問題が取り上げられている。

ICAAT 側より、今後は、体制強化のためにも日本・中国・韓国の参加が必要であるとの指摘もあった。
8 会計士に対する面接インタビュー調査によるコメント。

7. 今後の動向

1997 年の通貨危機以降、タイの会計制度は急速に国際会計基準に近づけられてきており、完全な準拠の方向へ進むと思われる。
現段階において、次の4基準は導入されておらず、今後の議論とその導入時期が注目される。

1) 法人所得税(税効果会計)

2) 従業員給付(退職給付会計等)

3) 金融商品の認識と測定

これらの会計基準(特に税効果会計と退職給付会計)は、導入後の財務諸表に与える影響が非常に大きいことが予想される。

したがって、同基準導入後の損益に与える影響を見積り、これを連結ベースの利益計画に反映させておくことが、外資系企業の親会社にとって重要な手続になる。

また、税効果会計の強制導入は 2007 年 1 月からとなっている。

コメント:古い報告書ですが、それを踏まえて読んでほしい。 2015,4,8