タイにおける会計制度のあらまし


           2014年5月17日  元田時男

1.会計の重要性と対策


 特に中小企業の場合、タイへ派遣される現地企業の責任者は技術者が多く、技術のみならず、総務、会計と慣れない仕事もこなさなければならない。

従って、派遣員の事前研修では貸借対照表、損益計算書が読めるよう訓練することも重要である。


 それから重要なことは、会社は公開株式会社はもちろんであるが非公開株式会社も非公開株式会社法(民商法典)と2000年会計法11条、2004年会計職法(1962年監査人法を改正したもの)の37条により全て公認会計士の監査を受けなければならないのである。
従って、タイの公認会計士は圧倒的に数が足りなく、税理士制度もないので(パートナーシップの税務申告の監査については税務監査の制度はある)、日本と同様の会計サービスを受けることは困難である。


 ここにタイの会計の大きなネックがあるので、日系企業も、特に会計専門家が本社にもいないような中小企業では、赴任前にある程度の会計知識を習

得するか日本からの指導体制を構築するなどの工夫が必要となる。



2.会計に関する法令、会計基準


 先ず、民商法典の第1196条から1207条までが、非公開株式会社の会計に関する規定である。

そこでは貸借対照表、損益計算書の作成が義務付けられている。

又、一般に公表が義務付けられており、総会で承認後1ケ月以内に商務省(地方の場合、県商務事務所)に届けることとなっている。

ただし、2001年6月4日付商業省令により以下の登記済パートナーシップは公認会計士の監査報告は不要となっている。


(1)資本5百万バーツ以下


(2)資産額3千万バーツ以下


(3)収益3千万バーツ以下


 そして以上の登記済パートナーシップの税務申告への監査証明については、,国税局が認可する「税務監査人」の資格を有する者の証明で足りることになっている(2001年6月12日付国税局長告示)。


 公認会計士については、2004年会計職法により会計職連盟が設けられ、会員である公認会計士のほか記帳責任者の監督、訓練、倫理の向上、会計基準の設定を行っている。


 2000年会計法は、1972年革命団布告285(一般に会計法と呼ばれていた)を全面的に改訂したもので、会計に関する最も基本的な法律となっており、これを根拠として2000年8月に商務省から省令が出されている。


 新会計法、省令を要約すれば次の通りである。


(1)会計行政は、商務省Department of Business Development(DBD)が担当。


(2)備えるべき帳簿を規定。


(3)従来の会計費任者に加え会計主任の規定ができ、2000年8月3日付商務省商業登


   録局(機構改革で現在はDBD)告示により、以下のように資格が定められている。

BOI認可企業は会計学士以上をおかなければならないことに注意。


  1)タイ国内に居住していること


  2)タイ語の能力を有すること


  3)会計法による禁固刑の最終判決を受けたことがないこと。ただし、受刑後3年以  上経過した場合を除く


  4)以下の資格を有すること


   @登録資本金が5百万バーツ以下で、総資産かつ収益が3千万バーツ以下の場合は 職業短大(PWS)以上で会計に関する学科を終了していること。


   A上記@を超える場合、または、公開株式会社、外国法人、税法上の協同事業体、 銀行、金融業、証券、保険業、BOI認可企業については、会計学士または同等以上の学位を有すること。


(4)会計規準に従うことが強制されている。


(5)関係書類の保管義務(5から7年)


(6)会計言語の指定(タイ語、外国語の場合タイ語訳を付す、コンピュータ用符号も可


 であるがタイ語を付すこと)。


(7)法違反の罰則


  会計責任者と目される日本人派遣員は、会計が不備な場合処罰されることもあるので 注意すること。

 

3.タイの会計基準と非上場会社等用会計基準について


タイの会計基準(Thai Accounting Standards-TAS)はタイ会計職連盟が作成し、官報で公布することになっているので、この規準を使用するとなっている。

タイの会計基準は,度々改定されているが、2011年1月1日から始まる会計年度からIAS、IFRS(International Financial Reporting Standards)に準じたTAS(Thai Accounting Statdards)、TFRS(Thai Fonancial Reporting Standards)が2010年に官報で公布され、大部分は2011年1月1日以降に始まる会計年度から適用となっている。


会計基準は、日本でも元々上場企業以外に強制されるものではないが、従わないと一般の信用は得られないという問題がある。


しかし、タイでは全ての企業が従わなければならない強制規定になっているので注意が必要である。


ただし、TAS、TFRSは上場企業等以外については、緩和された基準が2011年の5月6日付官報で公布されている。


その概要は以下の通りである。


(1)適用対象:公共の利害に関係しない事業(Non-Publicly Accountable Entities-NPAE)


(2)NPAEの定義は、概略以下の事業以外を指すことになっている。


  1)上場企業(国内外で上場している)


  2)金融機関、生命保険会社、損害保険会社、証券会社、投資信託、タイ国農産物先物取引所など


  3)公開株式会社


  4)その他追加される事業


(3)基準の内容


  1)目的、範囲、財務諸表など、


  2)現金および現金同等物、


  3)債権


  4)棚卸商品


  5)投資


  6)土地、建物、設備


  7)無形資産


  8)投資用不動産


  9)借入費用


  10)賃貸契約(リースを含む)


  11)法人所得税


  12)負債と将来の負債


  13)後発事象


  14)収益


  15)不動産販売からの収益


  16)建設


  17)為替変動の影響


4.会計主任の登録、講習について


 会計主任の資格については前述したが、具体的にどういう役職が会計主任かということについては、2000年8月3日付商業登録局(現商業発展局)の告示があり、それによると会計部長、会計係員など会計に責任を有する者とされているが、そのほかに、会計事務所の責任者などとなっている。

そして、会計主任は本告示の7条(1)により会計業務を始めてから60日以内に商業発展局に登録をしなければならない。


 また、同条(2)により3年間ごとに講習を受けることが義務付けられているが、それについては2004年8月5日付商業発展局告示が出されている。

それによると、3年の間に合計27時間の講習が義務付けられていて、そのうち18時間以上は会計に関する講習と定められている。

講習は政府または私立の機関で行われ、その内容については同告示5条により次のものがある。


@会計


A会計関係法律


  会計法


  会計監査に関する法律


  民商法典(パートナーシップ、株式会社)


  公開株式会社法


  証券、証券取引所法


  商業銀行法


  生命保険、損害保険法


  投資、証券、クレジットフォンシエ法


  その他会計と関係ある法律


B税法


C会計と関係あるIT技術


Dその他


5.会計報告


 非公開株式会社、公開株式会社は、期末から4か月以内に会計監査人(公認会計士)の監査を受けた決算報告書が株主総会で承認。

期末から5ヶ月以内に、商務省商業発展局会計事務所(地方の場合、県商業事務所)へ提出しなければならない(会計法11条)。


 財務諸表の様式については、2011年から会計基準が変更されたことにより2011年9月28日付商業発展局告示が出され、登記済みパートナーシップ、


非公開株式会社、公開株式会社、外国の法律で設立された法人、事業共同体の5種類に分けて発表されているが、そのうち非公開株式会社については財政状態計算書(注:旧基準の貸借対照表に代わるもの)と損益計算書

(注:新会計基準では、包括利益計算書―ゴッブ・ガムライ・カーツン・ベッツセッツであるところ、非公開株式会社には旧名称を使用している)の様式が

定められている。